食×〇〇で体験をまるごと味わえるように

このお店の名前は「閒」と言います。

この漢字一文字で「あわい」と読みます。間という文字の旧字体で、人と人との関係や距離、隙間、建築では柱と柱の間の距離を1間(いっけん)と言ったりします。

BARと小料理屋さんと中国茶の茶房と雑貨屋さんとギャラリーが混ざったような、小さいけれどそこにあるモノは全て買うことができる、モノとヒトとの接点の増えすぎた現代の水先案内人のような場所です。

きっかけは、とある食事会でした

このお店を作るきっかけになったのは、共同オーナーでもある陶芸家の齋藤有希子と、フードスタイリストで料理家の田島明日香による食事会イベントです。

陶芸家の器というと、お店やギャラリーでは棚に飾られて売っています。

でも、器は料理を盛る道具です。

服や靴を買うなら試着をし、食べ物を買うなら試食をし、自動車を買うなら試運転をするように、道具も実際に試して体験しなければその良さや自分の暮らしにフィットするかはわかりません。

そこで、陶芸家と料理家のコラボで器に実際に料理を盛り付けて召し上がっていただき、気に入った器をご購入いただける体験型の食事会+即売会を行って来ました。

このイベントはとても好評で、5年間の間で通算7-8回ほど開催をし、暮らしのための道具を実際に体験して買える場所の必要性を強く感じました。

機能を超えた何かを見失わないために

また、日常生活の中で暮らしの中に1枚数千円のお皿を取り入れる豊かさというものは、きちんと伝える場がなければなかなか広めることができません。これは他の多くのこだわって作られているモノにも同じことが言えるでしょう。

ともすれば物にあふれた現代の中で、安価な既製品でも充分という価値観に対して、それでもこだわって作られたモノを選ぶ理由。

花には機能はないですが、空間に花を生けることで少しだけ暮らしに彩りが生まれます。ゆとりがなければそんなことはできないと言われますが、逆に花を生けることでゆとりが生まれることもあるのです。

これは、花だけではありません。こだわって作られた陶器や食器、日本各地のその土地の知恵の詰まった調味料や食材、これらには便利でハイスピードな暮らしの中で見失ってしまった大事なモノが詰まっているように思うのです。

ちいさな灯台のような場所へ

この場所でやりたいことはたくさんあるのですが、一言でいうなら「声の小さなクリエーターのための、ちいさな灯台のような場所」にできたらと思っています。

6席という小さなスペースに込めている思いは、そこに座ればグループが別れることなく、全員がコミュニケーションを取れること。そして、カウンターごしにサービスや調理を見ることもできる、熱量の伝わる距離感を大事にしたかったからです。

SNSが普及し、ともすればコミュニケーションがスマートフォンの中で完結しがちな昨今だからこそ、リアルの場で作り手の思いを話せる場所・聞ける場所は重要になってくるはずです。

作る人も、使う人も、創作を楽しむ人々の「閒」をつなげられるような、そんな場所に育てていきたいと思っています。

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